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恐怖の13段
我が家の階段は13段である。
本当はこんな文章を書く事によって、その事実を自分の脳みそに深く刻み込むような
マネはしたくないのだが、不合理な恐怖心から脱出する為には現実というモノを直視せねば
なるまい。
さて、繰り返すが、我が家の1階と2階を繋ぐ階段は13段である。
13・・・不吉である。
・・・・・・・・・・・・・・・・不吉なんだろうか?
13という数が「不吉な数」だと言われているのは知っている。だが、ここで、私はこの
数字が不吉だと言われているその理由を全く知らない事に気が付いた。
知らないのである。知らないのに不吉だと認識していたのである。
これは、大変よろしくない事である。隣の席のマキちゃんが、「サヤカちゃんって
すっごく嫌なヤツなんだよ。」と言うのを聞いて、自分はそのサヤカちゃんの事を何も知らないのに
「だよねぇ〜っ」
一緒になって悪口を言うようなものである。そんなの駄目である。サイアクである。園児である。
やはり、13という数は不吉でもなんでも無いのではないだろうか?
こんなもの、数字の1と3が並んだだけのモンだ。
「ここに13個のリンゴがあります。」
別に怖くない。
「ここに13本の鉛筆があります。」
怖くないじゃないか。
「ここに13体の宮尾すすむ人形(陶器製)が並んで笑っています。」
ちょっと怖いかもしれない。
だが、怖いのは13という数でなくて、笑っている宮尾すすむ人形(陶器製)の方である。
そう、13という数字は、普段、別に怖くも何ともないのである。
しかし。
13段の階段というのはやっぱりなんだか怖い。
何でだ?
13・・・・・・13・・・・・・13日の金曜日。
ジェイソンとかいうのが主役の映画は、確かに恋愛ものでも探偵ものでもなく、ホラー映画だった。
が、それもチャッキー程は怖くなかった。
13・・・・・・・・・・・・・・・・・10たす3・・・・・・9たす4・・・・・・・・・
13歳の太郎くんは10本の注射針を常備していましたが、今日、新たに新宿で5本購入しました。
さて、今、太郎くんのランドセルの中には何本の注射針が入っていますか?
答え「13本」理由「今さっき友達の次郎くんに一本1万円(中身込み)で2本売ったから」
13・・・・・ねぇ。別に怖くないんじゃないんですか?
整数であり自然数であり奇数であって素数である。
47という数と比べて特別劣ってもいないが、勝ってもいない筈である。
その筈なのに、夜中、階段を上がる時のあの恐怖心。
途中で一段分に2歩費やしたり、一段飛ばしで上がったり。
無意識に段数を数えてしまっている事に気付いた
時は、無理矢理目茶苦茶な数字の羅列を思い浮かべる事によって
頭の中の数字をリセットしてみたり。
キャパの少ない私の脳みそは、そんな事で簡単に混乱してくれる。
だが、しかしである。
そんな事をしてみたって、「階段が13段である」という事実を、私はもう既に知っているわけなのである。
にも拘らず、13という数から何とか逃れようとするこの努力。
ーまさに無駄な努力である。
しかもこの恐怖心には全くもって何の根拠も意味も無いのである。
そう、意味が無い。
無いのだ。
てことはつまり、私は、毎晩びくつかなくたって良いという事ではないのか?
そうだよ、そうなのだ!!
自分の家の階段が13段だからって、怖い事は何も無いのだ!!
大体、今日数えてみたら14段だった、なんて方がずっと怖いじゃないか。
・・・・・・それは本当に怖いぞ。
嫌な事を考えてしまった。
・・・・・・やっぱりこれからも我が家の階段を上る時は、13という数から逃れようという
無意味で必死な努力が続くに違いない。
<終>
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