つれづれなるまゝに、日くらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。 (『徒然草』吉田兼好)

『十進法』
最近、十進法というものに縛られていることを自覚することが多い。
例えば、100円ショップ。
実際は100円玉一枚では何も買えない店であるわけだが、 それでも税抜き100円というのは何かの単位のようなすっきり感がある。 これが101円ショップだと、非常にキリが悪い感じがすることであろう。
どうせなら100円にしろヨ、と。
だが、100円と101円と、何の違いがあるというのだろう。
・・・勿論、100円玉という硬貨がある以上、硬貨一枚で表現される100円と 二枚以上必要な101円では違いはあるのだが、 もしこれがクレジットカード払いであっても 100円と101円ではキリの良さが全く違うであろう。
10進法に縛られた結果である。

例えば宝くじで下3桁が000のクジがあったとする。
最近は当たりくじを決めるのもコンピュータが介在するそうだから、 いくらでも作為の余地はあるように思うが、 お上はそんな非道でリスキーなことはしないだろう、とお人よしの私は思う。
となると、000というのは724という番号と比較して等しい当選確率を持つはずであるが、にも拘らず、000のクジがあると 「あぁあー。当たらなさそう」 と思うわけである。
10進法に縛られた結果である。

例えば珍しく「さぁ30分勉強しよう」と時計を見た時、 それが21時32だったりすると、何だかキリが悪いので、 28分後にするか、と考えたりする。
10進法に縛られた結果である。多分。

例えば新聞に載っている人生相談。
「会社の先輩に怒られて落ち込んでいます。どうしたら良いでしょう（30代男性）」
もしそんな投稿があったら、「勝手にしなさい。」と答えたくなるであろう。
それに対し、
「会社の先輩に怒られて落ち込んでいます。どうしたら良いでしょう（20代男性）」
もしそんな投稿があったら・・・。
やはり「勝手にしなさい。」と答えたくなるであろう。だがその後に「この先輩はきっと昨日彼女にきっぱりすっぱり無残に完膚なきまでにフられて、その結果こんな風に機嫌が悪くて自分に八つ当たりしているけれど、実は内心泣きそうなんだな、と勝手に想像してみれば、先輩の怒りなんて何とも感じなくなりますよ」などと優しいアドバイスをつけてあげようかという気にもなる。かもしれない。
つまり、20代と30代ではこんな風に受ける印象が異なってくるわけだが、（20代男性）と（30代男性）は、実は29歳11ヶ月と30歳0ヶ月で、実際はほとんど年齢差がないかもしれないのである。
これも10進法に縛られた結果である。
もしこれが16進法であれば、 1F歳(=10進では31歳)と20歳(=10進では32歳)が境目になり、10進で言う30歳男は後1年、 甘えたことを言っていられたのに。




『味噌』
最近、味噌という調味料に敏感になっている己を自覚することが多い。
インドといえばカレー味、日本といえばアミノ酸味だが、 ラーメンといえば塩味、味噌味、醤油味。とんこつ味もある。
どれも美味しいが、私は醤油味が好きだ。
塩味は自宅で食べる分には悪くないが、なんとなく安っぽいイメージがあるし、 味噌味は何故だか昔からそれほど好きではない。
何が嫌って、語呂が悪い。糞味噌とかいうどうしようもない言い回しもある。
と言いつつ、味噌汁も味噌せんべいも味噌田楽も大好きだが、 それらは味が美味いのであって、やはり語呂はよろしくない、と思う。
味噌味噌味噌。口未口曽。
私に味噌味を勧めるのは、何か裏の意味があるのだろうか？
カミソリ。耳掃除。
三十路。




『つまりは』
祗園精舎の鐘の声、 諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす。

今をときめく美少年美少女達も、あと50年もすれば すっかりその辺の爺婆だ。
時々石坂浩二や吉永小百合などの突然変異体も現れないわけではないのだが、 まぁ大体はその辺の爺婆になる。
ざまぁみろ。
諸君、例え今は若くてピチピチで筋肉痛は次の日で休日は早起きで腰痛肩こり知らずでも、生きていればそのうち爺婆になるのだ。
ははははははははのははははははは。
母はハハハ母の母はハハハハと笑う。
まぁ大抵の場合は元々娑羅双樹でも盛者でもなく、 だから失うものも、大してない。
他人事のように言ってみたが、まぁ私も似たようなものである。



子曰、吾十有五而志於学。三十而立。四十而不惑。五十而知天命。後はまぁ、あまり人様に迷惑を掛けずにボケないで健康でいられれば良いのではないでしょうか。


そんなことを考える。
私は先日、30歳になりました。