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上巻と下巻


数ヶ月前、古本屋で古本を買った。
積極的に欲しい本は、つい新品のを買ってしまうのだが、ただの暇つぶし本なら古本でも構わない。 あの安さは魅力的だ。
その時はどこかへ出かける為に電車に乗る直前であり、何でも良いから適当に買ってしまえ、 と数冊の本を選んだのであった。その中の一冊、アメリカ発の文庫本。 紙が薄茶色く変色しているような、いかにも「古本」といった態の本であったが、その分値段も安く、 ぽっきり100円であった。
その本を 選んだ理由は、裏表紙に「現役○○による世界的ベストセラー」と書いてあったからである。
どうやら上下巻らしかったが、生憎そこには上巻しか無かった。 が、私はその本を選んだ。他に面白そうな本が見当たらなかったし、続きが読みたくなった ら下巻は普通に買えばいい、と思ったのである。
さて、電車の中で私は早速本を開いた。 古本ではあるが、仮にも「ベストセラー」である。 それなりに期待して読んでみたが、ハッキリ言って面白くなかった。 もしかするとそれは訳がイマイチな所為だからなのかもしれないし、或いはただ単に私の趣味の問題なのかも しれなかったが、兎に角、面白くはなかった。 よって私はその上巻を最後まで読んだにも拘らず、下巻を購入しようという気にはならなかった。
そしてその本の存在は、私の頭から奇麗サッパリ消去された。

さて、先日私は再び別の古本屋へと行った。そこは割と種類も豊富で奇麗な店であり(どうやらチェーン店 らしい)、私は暫く店内をうろついていた。何冊か本も選び、そろそろレジへ向かおうか、 というその時、私は偶然、例の本を見付けた。例の面白くはなかった本である。見ると、 上下巻揃っている。それに古本にしては結構きれいだ。 面白くない、とさんざん喚いたが、たったの100円ならば、下巻も読んでやらなくは無い。 未消化ってのも体に悪いし、もしかして下巻は面白いのかもしれない、 なんてったってベストセラーだし?
そう思い、私はその本を手にとったのであった。

さて、それでもその本は暫く私の部屋の中で放置されていたのだが、今日、トイレに閉じこもるにあたって、 ようやくその本を読んでみようかという気になった。他に読んでいない本が手元に無かったのである。 私はトイレに入り、便座に座り、おもむろに本のページをめくった。

・・・・・・・・・・ん???


さて、どんなオチだったら面白いだろう。例えばその本は実は上中下巻3冊組であった、というオチ なら面白かったのかもしれない。アハハと照れ笑いをしてそのうち中巻を買えばいいのだ。 だが、この本は上下2巻のみである。

そう、私の開いた本は「上巻」であったのだ。
上巻再び。
このオチは私個人としては面白くない。
いくら安かったからといって、気に入っていない本を上巻のみ2冊も買ってどうする・・・。
私は少々げんなりとしながら、早々にトイレから退出したのであった。

<終>

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