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地雷


そうまでして、お前は何を得たいんだ?
苦痛に耐えたその先に、何を見ている?

私は時々、自分に問いかける。
トイレを我慢してマインスイーパをやり続ける時だ。
さらに右手の人差し指の関節は軋み、眼は乾燥して痛みを訴える。
それでも私は歩き続けるのだ。
非生産的な中毒患者=ダメ人間へ向かって。
ちなみに、スケベニンゲン(Scheveningen)はオランダの都市の名前である。
さらに、バヌアツ共和国南部にある島の名前はエロマンガ島である。
こんな下等なネタで私が喜んでいると思ったら大間違いである。

閑話休題。
さて、私を駄目にしているマインスイーパとは、Windows標準でついてくるゲームである。
簡単にルールを説明すると、隠されたマス目上にランダムに配置された複数の地雷(マイン)を踏まないように、出来るだけ速く残りの安全な場所を撤去するという極悪非道なゲームである。
が、このゲーム、そもそも地雷の配置によって難易度が大きく変わってくる。 その点、タイムアタックを競うゲームとしては、多少問題があると言えよう。 さらに、このゲームには致命的ともいえる欠点が他に存在する。
「考えてもどうしようもない場合が存在する」というのがそれだ。 例え、知的で素敵な私の頭脳をもってしても、だ。

例)
 |
 |12♪
 |??2
 |??3
 |♪♪♪
 |232
 |000

数字:確定 ♪:地雷確定 ?:不明

そんな場合どうするのかといえば、「当て勘」でマスをあけるのである。 それ以外、方法は無い。これでは頭脳ゲームとは言えまい。

が、こんな風に見逃せない欠点のあるゲームであり、且つ、私はそれを認識しているにも拘らず、何故、私はこのゲームに囚われているのであろうか。

妥当すぎて申し訳ないくらいの解答だが、このゲームの中毒性は、その単純さにあるのだ、と思う。 スタートからフィニッシュまで、ひとつとして盛り上がる場所も無ければ、 意外性のある展開もない。 通常のゲームであれば欠点にもなりうるこういった特性が、パズル系ゲームでは 何故か、人を虜にする要素となる。
「テトリス」しかり、「ぷよぷよ」しかり。 実は私、恥ずかしながら、テトリスにもぷよぷよにも嵌った前科があったりする。 テトリスなど、一時期、夜眠るときに幻の音楽とともに頭の中でブロックが落ちてきて困ったものであった。しかも、想像の癖に、うまくはまらなくて苛々したり。
と、そんな風に嵌りまくったテトリスに関しても、最終的にはその魔の手から逃れることが出来た強い強い精神力を持つ私なのに、何故、マインスイーパからは未だに逃れられないままなのか、と言えば。

それは、マインスイーパがテトリスやぷよぷよと比較し、「より単純だから」である。 あまりに単純で、ほかの事を考えながら片手間に出来そうなくらいだ。 そんなだから、自宅でPCを起動していて、ほんの少し「考慮」モードに入ると、パブロフの犬よろしくマインスイーパを始めてしまうのである。
ものを考えながら余った脳の一部でマインスイーパを楽しむ。 限られた時間しかない、この人生。効率のよい使い方を追求するのは悪いことではないではないか。
とはいうものの、所詮私の脳演算装置は擬似マルチタスク。いつのまにやら脳はマインスイーパに占領されてしまっていたりする。
駄目じゃん。
さらには、あまりにPC前での考え事からマインスイーパ起動までの一連の動作が身に染み付いていて、気を抜くと危うく会社でも、慣れた私のいたいけないけない手が勝手にマインスイーパを起動しそうになっていたりする。恐ろしい。

こんなになってしまうまでやり続けるなんて、さぞかしお前はマインスイーパが好きなんだろうな、と、人は思うに違いない。だが。

「PC起動したらまず何やるの?」
マインスイーパである。
「休日は何やってるの?」
マインスイーパである。
「趣味は?」
読書と睡眠である。

マインスイーパは決して私の趣味ではないのである。
私の趣味が、こんな下らない単純ゲームである筈がないではないか。ふん。
マインスイーパを楽しいと言ったり、モザンピークにある都市の名前「イボ(IBO)」に喜んだりする下等な輩とは違うのだ。
にも拘わらず、マインスイーパをやり続ける私。
まさに中毒症状である。

このゲームと出会ってから、もう10年にもなる。
この10年の間、私はマインスイーパにどれほどの時間を費やしたのであろうか。
そして、その行為が幾ばくかでも私の人生にプラスに働いたのだろうか。
否。このゲームは私に悪影響しか与えていないに違いない。
もし、このゲームが存在していなければ、私は素敵なーいや、無論、今でも十分素敵だがーもっと素敵な人間に磨かれていたかもしれないのに、などと詮無き事を考えたりもする。 もし、本当にこのゲームがこの世に存在していなければ。


代わりにソリティア(Windows標準ゲーム)を延々とやり続けることになっているのは、ほぼ間違いないが。


結局私は、どう転んでも、駄目人間なのだ。
ちなみに、この文章を書いている間に、私がマインスイーパをやった回数は・・・。
まぁ両手両足の指の数では全く足りないということだけ言っておこう。


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