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並と呼ばれて



ナミテントウ【並瓢虫】

ふと、ナナホシテントウの七つの星が、どういう配置になっていたのかを 知りたくなって、検索してみた。
その過程で、こんなテントウムシを見つけた。

その名も、ナミテントウ【並瓢虫】

「並」なのである。
吉野屋の牛丼の「並」はただの普通サイズを意味するが、「並」の人間と 言うと、面白みの無い平凡な人間を指す。
テントウムシは牛丼ではないので、ナミテントウは面白みの無い平凡な テントウムシだという意味であるのに違いない。
別に、自分は特別だと威張った訳でもないのに、何故「並」だなんて 蔑まれなくてはならないのだろう!
キャミソールと超ミニで腰振って歩いている訳でもないのに、何故「ブサイク」だなんて見知らぬ人から擦れ違いざまに呟かれなくてはならないのだろう!!
パパもママもO型なのに、何故ボクはA型なんだろう?

「並」

そもそも、この世にナナホシテントウやらアカホシテントウやらムーアシロホシテン トウやらダンダラテントウなんかがいなければ、そいつらと比べられて「並」だ なんて言われなくて済んだのに。と彼または彼女は呟いた。
奴らがいるからこその「並」。
自分の価値基準は、絶対ではなく、相対的に決まるというのか。
ちょっと殺意が芽生えたり芽生えなかったり。
そりゃ、ただ並じゃなけりゃ何でも良い、ってわけでもない。
例えば、ちょっぴりテントウムシと形が似ていなくもない「スカラベ」っていう昆虫(甲虫)、 あれの日本名は並じゃないどころの話じゃあない。
が、あまりうらやましくはない・・・・・「フンコロガシ」なんて名前。
とはいうものの、それは比較の対象が強烈すぎるのであって、並という名前が良いわけでは 決してないのである。

「並」

嫌な響きである。
その他大勢である。
固有名詞であるにも拘わらず、まるで一般名詞のようなインパクトしかない。

でも実は、こっそりと英語名はLady Bird(聖母の鳥)なんていう格好良いもの だったりする。けっ。
どうせならいっそのこと、ordinary insect(普通の虫)とかいう名前の 方が潔くて良かったのに。
そう言ってはみるが、本当はちょっぴり嬉しい並テントウ。
僕もアメリカに飛んで行こうかな。

「並」

そりゃ確かに、北は北海道から南は九州まで、日本中で見られるテントウムシさ。
図鑑じゃ紹介文の最初のフレーズが「最も普通に見られるテントウムシ」さ。
だからって、「並」は無いんじゃない?!並は。
せめて・・・せめて、何だろう?
やっぱり並、かも。


他人事ながら並でしかありえない並テントウに、ちょっぴりアンニュイな 気分になった。

と、ここでそんなあなたにちょっとハッピーなお知らせ。
面白い研究の記事を見つけた。一部抜粋する。

<ナミテントウ幼虫による半促成栽培ナスのアブラムシ類の防除効果>
半促成栽培ナスにおいて、アブラムシ類の発生初期にナミテントウ2齢幼虫を1シュ−ト当たり1頭(株当たり5頭)放飼すると、1週間後には1シュ−ト当たり(または10葉当たり) 0.5頭以下に抑え、その後約40日間低密度に抑制できる。

ね、ちょっとハッピーになったでしょ?
並のくせに、結構やるのである。
今流行りの無農薬野菜を実現する必須アイテムなのである。


でも、きっと、ナスの味がするアブラムシばかり食べ続けるんだろうな、と考えると。
頑張っても並であり続ける彼らの姿を想像し、なんだかしんみりして来てしまった。
<終>


豆知識
スカラベ[日本名:フンコロガシ]
エジプトでは、 丸めて球になった糞を転がす姿が沈んだ太陽を東へ運んで再び昇らせるイメージと重なることから 聖なる生き物とされている。ー重ならないよ。

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