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笑うということ
「スマイルくださいv」
「お買いあげありがとうございます。単品で500円です。」
感情の表現方法は、国や文化によって、様々な違いが存在するものであるが、
基本的な喜怒哀楽の表情というものは大体万国共通であろう。
その中でも特に、「楽」の表情、つまり笑顔というのは、人類共通である。
機械に表情を付けようという研究において、人間がロボットの表情を見分けることができるか、という実験についての報告例があるが、これによると、笑い、は、怒りと同じ程度には高い識別率が得られるということである。
つまり、それだけ単純で共通だということであろう。
いや、確かに昔、会った途端に「くっくっく」と肩を震わせた友人を見て
当然笑っているものだと思い、つられ笑いをしながら「え?どうしたのォ〜」と
聞き、顔を良く見てみたら泣いていた、という痛い痛い思い出があるのだが、
まぁそれも、最初に顔を良く見なかったから間違えたのである。
決して私が酷いヤツだからではない。
人間、楽しいときの「笑い」というのは、遺伝情報に組み込まれた人類共通の
反応なのであろう。
しかし、人間、楽しいとき以外にも笑うのを御存じであろうか?
そう、あの、異質な笑いのことである。
異質といっても別に、暗い部屋で眼鏡をきらりと光らせて「うひ。うひひひ。」
という笑いではない。
また、日本人特有であるという「追いつめられると、笑い出す」症候群
のことでもない。
人類共通の異質な笑い。くすぐったい時の笑いである。
私は、今でもはっきりと覚えているー
その昔、兄貴に馬乗りに乗っかられ、「くすぐりの刑」を受けた、あの日のことを
<倒置法強調>。
私はその間馬鹿笑いを続けていたが、あの時、確かに、自分の生命の危機を感じた。
と同時に、確かに、殺意が芽生えるのを感じた。
あれは本当に苦しい。苦しくて苦しくて、殺意だか便意だかなんだか分からないが、
そんなものが沸き起こるくらい苦しい、が、それでも、くすぐられた方は
笑っているのである。
あれはー。
あれは、何なんだ一体。
あれは、笑いであって、笑いではない。
確かに時々、不意に恋人にくすぐられ、
花子「きゃっ。いやだ、もうぅ!待ちなさいっ!!」
太郎「はっはっはー、こっちまでおいで〜」
次郎「あはははは、あははは、おい、待てよ〜」←誰?
とかいう微笑ましくも妬ましい『くすぐられ笑い』もあるだろうが、
それはくすぐられた行為
そのものではなく、
「くすぐられた=きっと構って欲しい=自分に興味があるのね=あたしもAIしてる」
、的な笑いであると思われる。
くすぐられた瞬間というのは、通常、
つねられたときのように、蹴飛ばされたときのように、ビニールを頭から
被せられたときのように(注:やったら死にます)
悲痛な叫び声なりうめき声なりをあげればいいものの。
多分、くすぐられた時に、楽しいときと同じ「笑い」という反応を
返してしまうのは、人間の進化の過程で、
何か間違ってしまった結果なのであろう。
だってどう考えたって、オカシイもの。
ちなみに、先頃チンパンジーでも発見された『新生児微笑』も、微笑だとか言って
いるが、あれは別に幸せな想像をしているわけでも楽しい夢を見ているわけでも無い、
ただの肉体的反応(なんだかちょっとエッチな言葉だ)であり、まあ蒙古斑みたいな
ものだ。
「スマイルくださいv」
「申し訳御座いませんお客様、ただいま品切れ中です。」
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