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私は聖人君子軍団の一員かと間違えられてもおかしくないほど立派な人間だが、 それでも人並みに、嫌いな物がたくさんある。
うざい人間、電話、ホワイトアスパラ、朝ドーターの曲、グミ、眠いのに眠れない 状況、虫、人参グラッセ、予定の入っている休日、怪談話、密漁、スッポンの顔、 掃除、巨人が負けている試合、プチトマト、マザーグース、月曜日、流行り物、 キツい香水、偉い人、酢豚の中のパイナップル、タイムリミット、宗教、 金の貸し借り、スポーツ新聞の「か!?」の字 etc.
とまぁこんな風に嫌いなものが人並みにあるのだが、 これらは、生きていく上で避けて通れるモノと避けては通れないモノに分類する ことができる。
このうち、避けて通れないモノというものは、まさにその「避けて通れない」という 理由から避けて通れるモノより嫌いだったりするのだが、その避けては通れないものの中に、上記の物以外に これは外せない、というものがある。
「店員」という存在がそれである。
そう。私は小さい頃から、店員が嫌いなのである。
というか苦手なのである。
彼らは同じ「人類」という種でありながら、意志の疎通が上手く図れない 異種族なのである。

例えばファーストフードで。
「○○と××、どちらがよろしいですか?」
店員の早口が聞き取れないことが良くある。
ある時など、3回聞き直した挙げ句、隣にいた友人に「何て言ってるの?」
と尋ね、ようやく理解したのであった。
こういうことが起こるから、なるべく簡単な単語で済ませられるセットメニューを 頼むというのに。セットを選んだ意味がないではないか。
ちなみに店員が言っていた言葉は 「コーンとコールスローどちらがよろしいですか?」だった。
・・・どっちでもいい、聞かずに持ってきてくれ。

またある時は、持ち帰るつもりでジュースを頼んだら、何故か何も聞かれず、 トレイに載せられた。
え?「お持ち帰りですか?」とか聞かれないの?
そしてトレイを持ったまま間抜けな顔で呆然と立っていた私は、 外で待っていた友人らに笑われた。
「またか。」

このように、私自身の会話能力や聞き取り能力の欠落も、 私の店員嫌いの大きな理由ではあるが、他にも、店員そのものに問題がある 場合がある。
それは主にデパートの洋服売場で見られる現象である。

なぜ彼らは、ウン○にたかるハエのように、我々を見ると寄ってくるのであろう?
いや、この例えでは自分がウン○になってしまう。
・・・蜜に吸い寄せられるハチのように、と言えば良いか。
そう、そのハチのような店員が、蜜のような私はハチ以上に大嫌いである。

質問があれば、こちらから聞きにいく。 もしくは来てくれオーラを出す。
しかし彼らは、私から何のオーラも出ていないのに(それは必ずしも購入意欲とは 何ら関係がないのかもしれないが)、とりあえず寄ってくるのである。
最悪である。

「最近の流行は〜」
だから流行り物は嫌いなんだって。
「お客様はこういう服はもう持っていらっしゃいますか」
プライベートなことには答えたくありません。
「お客様にはこのような服がお似合いかと・・・」
余計なお世話である。

こんな風に私は店員が嫌いであるため、 少々欲しい物でも、ヤツらが寄ってくればさっさと買うかさっさと諦めるのである。
眼があったらとりあえず逃げろ。ってな感じである。
私は弱いのである。

しかし、冒頭で書いたように、店員という存在は、時に、避けて通れないモノになる。
『店員に物を尋ねるとき』というのがその状況である。
私は先日、ビーチボールを買いに、デパートへ行った。
しかし、目的のブツは見当たらない。
諦めて帰りたかったが、それでは私の負けである(笑)。
そこで、店員が寄ってこないか「うーん、困っちゃったな」オーラを出してみたが、 こんな時に限って、店員は寄ってきてくれない。
そこで私は自分から店員のおばさんに近づき、勇気を振り絞って話しかけた。
ーおばさんは派手に驚いた。



売場のおばさんは店員ではなく、ただの売場にいたおばさんだったのである。


こうして、私の店員嫌いには、さらに拍車がかかったのであった。

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