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指笛入門

先日、某大物外国人ロック歌手のドームコンサートに行った。
気力だとか行動力だとか友達だとか、色々なものが不足している私は、今まで、 所謂"今時の"コンサートなど殆ど行ったことが無かったのだが、 今回数少ない友人のうちの一人が誘ってくれたので、行ってみることにしたわけである。
ちなみに何故誘ってくれたかと言うと、私が勤務中にこっそりヘッドホンで音楽を聞いているのに気付いた友人が、何を聞いているのかと尋ねてきたので 答えたら、偶然友人もそのアーティストの大ファンだったという、つまらない理由である。 まぁつまらないかどうかは主観的な問題なので、面白い理由ということにしても良い。

さて、前述のように、私は今時のコンサートの作法なぞ知らないし、 どちらかというと人が盛り上がるほど盛り下がるノリが悪いタイプである。
そんな私を心配した友人は、わざわざ過去のコンサートDVD・・のコピービデオをくれたのであった。
「予習しなさい」
せっかくなので見ることにする。

ふむふむ。
なるほどなるほど。

曲にあわせて手を上げたり、手をたたいたりジャンプしたり。
なに!?観客にマイクを向けている?みんな歌っている!?
ハイレベルだな、おい。

手始めにテレビの前で、合わせて飛び跳ねてみたが、テレビに薄く反射した自分の姿 が虚しかったので、すぐやめた。

次に歌詞を覚えることにした。
こういう時、大物というのは困る。
新人ならCD1枚分を聞いていれば良いのに、対象曲が多すぎるのだ。
仕方が無いので、それまでのツアーのプレイリストから当たりをつけることにした。
で、十数曲に絞って覚え始めたのだが、そう簡単にはいかなかった。

だって英語だからネっ!!

早々に見切りをつけて、サビの部分だけ覚えることにした。
なんだか分かっているところだけ歌う(←たまにこういう人を見かける)のも気恥ずかしい気がするが、どうせ適当に唇を動かしていれば誰にも分かるまい。
・・・というか、そもそも自分は誰の目を気にして暗記しようとしているんだろうか。
どうせ皆、ステージに釘付けで、私の唇なんて凝視するヤツぁいない、そんなことは 百も承知だが、それでもただ皆に溶け込みたい一心で暗記にいそしむ私。
我ながらいじらしい。というか、いじましい。
結局何曲かはフルで、何曲かはサビの部分だけ、必死に暗記して、当日に臨んだ。

ひたすら興奮。脳で間違った何かが生成されている。

そんなわけで、感情の起伏が乏しいと評される私にしては珍しく、興奮を外面にまで 反映させてみたのだが、その割には、ステージ上の様子をあまり見ていなかったような気がする。
では何を見ていたか、思い起こしてみると、そういえば近くにいたノリノリの人の身振り手振りを見ていた。
で、それを参考に必死にジャンプしたり手をあげたりしていた。

でもまぁ何か楽しかったのは確かだ。
また機会があれば行ってみたい。

で。
ライブといえばアレだ。
指笛。
ひゅーひゅーと声で言うのも恥ずかしいし(そんな奴いないか)、メンバーの名前を 叫ぶのも恥ずかしいし(しかもメンバーにいない名前を叫んだりする危険性もあるし)、「わー」とか「うぉー」とか「ぎゃー」とか、驚いたとき以外の場面でそういう奇声が出るように育ってきていないので無理だし、無理無理づくしなわけだが、盛り上がりには参加したい。
というか盛り上がりに参加しないと、という妙な義務感があるのだ。
自前の声帯は役に立たないし、警備員に怒られるのも怖いので道具も使えない。となると・・。

で思いついたのが、これ。
「指笛」

何かの試合やライブで「フューーーフィ!」と尻上がりで響くアレである。
これが出来れば普通に盛り上がり参加出来るんじゃないだろうか。

ラクしたい私にぴったりのホームページがあった。
「3日で出来る指笛入門」
これだ。

で、早速図を見てやってみることにした。
勿論最初から音など出ないわけで、ただ指を銜えた情けない格好でふーふー息を漏らす。
まぁ誰が見ているわけでもない、ヨダレが垂れたアホ面になっていても気にしない気にしない。
指がヨダレでふやけた頃、なんだか細く「ぴひゃー」と音が鳴ったが、あの景気の良い音には程遠い。
まぁでももうちょっと頑張ってみるか。何せ3日で出来るみたいだしな。

で、思い出しては指をくわえ、3日経ったが、相変わらず情けない音しかない。
おかしいな、と思って改めてホームページを見てみたら、こう書いてあった。


「延べで3日分(72時間)も練習すれば絶対できる様になります」


・・・まぁ気長に頑張ることにする。

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